心臓
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[症例]
大動脈弁石灰化スコアが低流量低圧較差大動脈弁狭窄症の重症度評価に有用であった1例
法里 優五十殿 弘二酒本 暁河村 浩平谷垣 徹椿本 恵則坂谷 知彦木村 晋三松尾 あきこ井上 啓司藤田 博
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2015 年 47 巻 12 号 p. 1454-1460

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抄録

 症例は69歳男性. 呼吸困難を主訴に当院に救急搬送され, 急性心不全にて入院となった. 経胸壁心エコー検査で大動脈弁の高度石灰化とそれに伴う開放制限を認め弁口面積は0.6cm2であり重症大動脈弁狭窄症を疑った. しかし, 左室駆出率25%と左室壁運動は低下しており, 大動脈弁通過血流速度2.76m/s, 平均圧較差17.4mmHgであり重症とは診断できず, 弁口面積の結果と合致しないことから低流量低圧較差大動脈弁狭窄症と考えられた. 正確な重症度診断のためにドブタミン負荷心エコーを行ったが, 高容量負荷でも一回心拍出量 (stroke volume ; SV) の増加は26%と収縮予備能は低下しており重症度評価は困難であった. 胸部単純CTにより大動脈弁石灰化スコアを測定したところ, 8808Agatston units (AU) と異常高値であったため重症大動脈弁狭窄症と判断し, 大動脈弁置換術を行った. 術中所見にて高度石灰化を伴う重症大動脈弁狭窄症を確認した. 心収縮予備能が低下しているためドブタミン負荷心エコーでも重症度評価が困難であった低流量低圧較差大動脈弁狭窄症に対して, 胸部単純CTによる大動脈弁石灰化スコアが重症度の判定に有用であった症例を経験したため報告する.

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© 2015 公益財団法人 日本心臓財団
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