心臓
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[症例]
難治性下肢深部静脈血栓症に対し経カテーテル血栓溶解療法が著効した若年女性の1例
山口 徹雄宮本 貴庸川初 寛道臼井 英祐宮崎 亮一平尾 龍彦山下 周原 信博柳下 敦彦梅本 朋幸山内 康照尾林 徹
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2015 年 47 巻 4 号 p. 440-446

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抄録

 症例は23歳女性. 月経前症候群に対し経口避妊薬を服用していた. 左下腿腫脹を主訴に救急外来を受診した. 造影CTで左総腸骨静脈から膝窩静脈に至る深部静脈血栓および両側肺塞栓を認め, 一時留置型下大静脈フィルター留置の上, 運動療法と抗凝固療法を開始した. 左下腿浮腫の改善なく腫脹と疼痛が続いたため, 第16病日に経カテーテル血栓溶解療法を施行した. 左膝窩静脈をエコーガイド下に穿刺し, 順行性にJ型ワイヤを進めた. 血栓は膝窩静脈から総腸骨静脈に及んでおり, 50cmのファウンテンカテーテルTMを血栓内に留置した. 高濃度ウロキナーゼ持続投与を24万単位/日で開始した. 投与開始翌日よりD-ダイマーは100μg/mL以上となり, 下腿浮腫の改善を認めた. 計72時間投与後造影し, 著明な改善を認めカテーテルを抜去した. 術後の造影CTにて静脈血栓は消失していた. 出血合併症および血栓後症候群なく経過している.  抗凝固療法で改善しない浮腫を伴う深部静脈血栓症に対し, 経カテーテル血栓溶解療法が著効した1例を経験した. 本例における治療の工夫として, 静脈弁破壊のリスク軽減のために膝窩静脈アプローチとした点, また局所でのウロキナーゼ濃度上昇により治療効果を増大させる目的で高濃度ウロキナーゼ血栓内持続投与を行った点があり, 有用であったと考えられる.

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© 2015 公益財団法人 日本心臓財団
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