抄録
肝膿瘍を感染巣とした急性細菌性心外膜炎から敗血症性ショックをきたした症例を経験し, その臨床経過につき報告する. 症例は, 62歳男性. 主訴は呼吸性動揺を伴う前胸部痛と発熱で, 既往歴として高血圧と2型糖尿病がある. 心電図で鏡面像を伴わない広範囲のST上昇, 心膜液貯留, 上記症状から急性心外膜炎と診断し入院した. その後, 進行性に心膜液増加を認めたため, 緊急で心膜開窓によるドレナージを施行した. その際に胸腔内へ混濁した心膜液が大量に漏れ, 敗血症性ショックおよびARDS (Acute Respiratory Distress Syndrome) をきたした. 腹部CTで孤立性肝膿瘍を認め, 心膜液の性状から, 細菌性心外膜炎と診断し, 適切な抗菌薬投与とエンドトキシン吸着療法を行った. その後, 解熱し感染兆候は徐々に改善した. 第40病日に肝膿瘍に対して肝膿瘍を含む肝部分切除術が施行された. 術後は経過良好であり, 軽快退院した.