2015 年 47 巻 8 号 p. 993-999
症例1 : 高血圧, 糖尿病, 喫煙歴のある87歳, 男性. 繰り返す安静時胸痛のため近医を受診し, 不安定狭心症の疑いあり当院へ紹介された. 前医ではわずかであった心電図でV2−4誘導の2相性T波は当院ではより顕著になっていた.
症例2 : 高血圧, 脂質異常症のある61歳, 男性. 胸痛のため近医を受診し, 心電図変化あり不安定狭心症のため当院へ紹介された. 前医で認めていたV2−4誘導で2相性T波変化が当院では消失していた.
症例3 : 高血圧, 脂質異常症のある62歳, 男性. 安静時胸痛のため当院を受診した. 症状は消失していたが心電図でV2−3誘導に2相性T波の陰転化あり入院した. 入院後の胸痛時にはT波の変化は消失し, 翌朝にはV2−3誘導に2相性T波の陰転化がさらに深くなっていた.
3症例とも緊急冠動脈造影を行い, 左前下行枝近位部に高度狭窄を認め同部位へ治療を行った. Wellens症候群とは不安定狭心症の中で, 胸痛を一度自覚した後の症状が消失した時間帯に前胸部誘導でT波に心電図変化を示す症候群である. その心電図変化は症状の消失した時間帯に変化をきたすため見過ごされることが多い. 胸痛を初診する可能性のある医師に対しての本疾患の周知・啓蒙を行っていくことの重要性を感じたため報告をする.