心臓
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[症例]
5年の経過を追えた野生型ATTRアミロイドーシスの1剖検例
川人 充知石川 恵理露木 義章蔦野 陽一石田 仁志金森 範夫松岡 良太谷尾 仁志服部 隆一寺本 祐記橘 充弘青山 武
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2016 年 48 巻 11 号 p. 1314-1322

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抄録

 症例は86歳男性,労作時息切れと前胸部痛が出現し来院.心電図で四肢誘導に低電位を認めた.心エコーで左室全周性の心肥大および,アデノシン三リン酸負荷による冠血流予備能の低下を認めた.99mTc-ピロリン酸心筋シンチグラムで心筋への高集積,心臓MRIでは右室,両心房および左室全周性に心内膜下優位の遅延造影を認めた.左室心筋生検組織でコンゴレッド染色および,トランスサイレチン(TTR)免疫組織化学染色陽性であることからATTRアミロイドーシスと診断した.初診から2年後に完全房室ブロックをきたし,DDD型恒久ペースメーカ植込み術を施行したが,労作時息切れや全身倦怠感が持続した.その後心不全増悪による入院を繰り返し,5年後に死亡した.剖検で両心房,右室,左室心内膜側から中間層の広範囲にTTR免疫染色陽性のアミロイド沈着を認めた.MRIの遅延造影所見と同様に心外膜側は比較的沈着が軽度であった.肝,膵,脾,腎,副腎,膀胱,肺など全身の臓器にも血管壁を主体とした広範囲のアミロイド沈着がみられた.遺伝子解析ではTTR遺伝子に変異を認めず,野生型ATTRと診断した.5年の経過を追えた野生型ATTRアミロイドーシスの1剖検例において,画像所見と病理組織学的所見を対比検討した.

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© 2016 公益財団法人 日本心臓財団
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