心臓
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[症例]
うっ血性心不全での入院を契機に診断された約30年間無加療で経過した中枢性尿崩症の1例
米田 浩平高橋 健文岸 宏一井上 広基別宮 佳奈子村上 尚嗣金崎 淑子新谷 保実岩﨑 優
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2016 年 48 巻 12 号 p. 1407-1413

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抄録

 症例は40歳代女性.2013年5月頃より労作時の呼吸困難を自覚していたが,徐々に増悪し夜間の起坐呼吸も出現したため6月に当院外来を受診した.胸部X線では心拡大と肺うっ血を認め,心エコーでは軽度の左室肥大とびまん性の壁運動低下を認めた.入院の上,カルペリチド等の投与を行ったが入院後14時間で約12 Lの多尿があり,Na 155 mEq/Lと上昇を認めたため飲水制限を解除,カルペリチドも中止した.問診によると中学生頃から1日10 L以上の多飲があり尿崩症が疑われた.高浸透圧血症時に尿浸透圧の低下を認め,血清ADHは測定感度以下と低値であった.頭部MRIにて後葉高信号の消失が認められ中枢性尿崩症と診断した.デスモプレシンの点鼻投与を開始後,尿量・飲水量ともに著明に改善し,口渇や夜間尿などもほぼ消失,心不全症状も改善したため退院された.

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© 2016 公益財団法人 日本心臓財団
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