2016 年 48 巻 5 号 p. 528-533
僧帽弁置換術, 冠動脈バイパス術後に感染性心内膜炎による僧帽弁位人工弁周囲逆流を生じた症例に対して, 右開胸アプローチ, 中等度低体温心室細動下で僧帽弁再置換術を施行した症例を経験したので報告する. 症例は65歳, 女性. 糖尿病性腎症のため12年前より血液透析中であった. 9カ月前, 他院にて虚血性心疾患, 僧帽弁閉鎖不全症に対し, 僧帽弁置換術 (MVR) と冠動脈バイパス術3枝を施行された. 術後半年を経過し, 発熱を認めたため精査したところ感染性心内膜炎と診断され抗生剤による治療を開始した. 弁周囲逆流が著明で心不全を併発し, 再手術が必要と判断された. 当院転院後3日目に, 右開胸にてre-do MVRを施行した. 術後, 気管切開術の施行など呼吸管理に難渋したが, 第52病日にリハビリ目的で前医に転院となった. 胸骨正中切開の既往のある症例に対する右開胸アプローチはグラフト損傷回避と, 僧帽弁位の良好な視野確保の観点から, 冠動脈バイパス術後の僧帽弁再置換術において有用と考えられた.