心臓
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[症例]
低左心機能が遷延した褐色細胞腫の1例
吉井 顕吉野 拓哉松坂 憲森本 智田中 寿一小川 和男名越 智古南井 孝介宮本 敬史武藤 誠吉村 道博
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2016 年 48 巻 7 号 p. 757-763

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抄録

 27歳男性. 褐色細胞腫とカテコラミン心筋症によるうっ血性心不全に対し内科的加療を行ったところ, 血中カテコラミン濃度およびうっ血所見は経時的に改善した. 第46病日に副腎腫瘍摘出術を施行したところ血中カテコラミンは正常化した. しかしながら退院後, 約1年経過するも低左心機能は遷延した. 通常カテコラミン心筋症に伴う心筋障害は可逆的で, カテコラミン暴露解除後に左心機能は改善することが知られているが, 本例のように低左心機能が遷延したという報告も少数存在する. 入院中の心臓MRIでは心筋の線維化を示唆する貫壁性のガドリニウム遅延造影を認め, また退院後も同所見は残存した. このことから, 心筋リモデリングの指標としての心筋線維化に着目し, 血清心筋線維化マーカー (プロコラーゲンⅢ型ペプチド) と, 心筋の炎症マーカー (CRP, インターロイキン6) を経時的に測定した. 結果, 炎症マーカーは周術期に高値を呈した後に退院後は低値で推移したが, 心筋線維化マーカーは退院後に持続的な上昇を示した. 以上から低左心機能が遷延するカテコラミン心筋症が存在し, MRIのガドリウム遅延造影がその予測因子となり得ること, また低左心機能の例では心筋線維化が持続的に上昇している可能性があり, 長期においてリモデリング予防が必要となることが示唆された.

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© 2016 公益財団法人 日本心臓財団
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