心臓
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[症例]
高度石灰化病変によるステント拡張不良に対して, エキシマレーザーにより良好な拡張が得られた1例
金子 海彦鹿島 由史菅野 大太郎喜古 崇豊渡邉 智彦只野 雄飛杉江 多久郎小林 健榎本 守雄藤田 勉
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2016 年 48 巻 7 号 p. 765-771

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抄録

 症例は92歳, 男性. 虚血性心疾患による急性心不全の改善後に, 左前下行枝近位部75%狭窄に対して, 経皮的冠動脈インターベンション (percutaneous coronary intervention ; PCI) を行った. 血管内超音波 (intravascular ultrasound ; IVUS) では, 病変部に表在性, 全周性の高度石灰化を認め, 3.0mm径の耐圧性バルーンによる前拡張を行い, 3.5mm径の薬剤溶出性ステントを高圧で留置した. しかし, ステントは高度石灰化病変により重度の拡張不良となったため, 耐圧性バルーンにより高圧拡張を繰り返し行ったが, ステントは依然として拡張不良であった. ステント再狭窄やステント血栓症等の重篤な合併症をきたす危険性が高く, エキシマレーザー血管形成術を行った. 通常のエキシマレーザーの使用法では得られる内腔が限られ, ステント拡張不良の主な原因となっているステント外の高度石灰化病変を蒸散することが難しいため, 生理食塩液の灌流を行わずにエキシマレーザーの照射を行うことで, ステント外の高度石灰化病変を破壊することに成功し, 耐圧性バルーンによる後拡張でステントも最終的に良好な拡張が得られた. 高度石灰化病変に留置されたステントが拡張不良であった場合, 従来のバルーンによる高圧拡張では十分な拡張を得ることは難しく, エキシマレーザーはステント外の高度石灰化病変にも介入できる有効な治療法となりうるため, 文献的考察を加え報告する.

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© 2016 公益財団法人 日本心臓財団
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