心臓
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[症例]
心房細動により左室流出路狭窄が顕在化した1例
小山 容土屋 隼人石垣 大輔長谷川 寛真玉渕 智昭祐川 博康
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2016 年 48 巻 8 号 p. 953-958

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抄録

 症例は90歳, 女性. 胸痛発作あり近医より当院紹介となった. 外来受診時の心電図は洞調律であった. 心エコー検査では全周性の左室肥大を認め, 僧帽弁輪石灰化と, 圧較差42mmHg程度の左室流出路狭窄を認めた. 冠動脈CT検査では有意狭窄を認めなかった. 後日, 胸痛を訴えて救急受診した際に, 心房細動を認め, 流出路圧較差は179mmHgほどに増大しており, 精査加療目的に入院となった. 洞調律に戻った際は, 流出路狭窄が改善しており, 心房細動により流出路狭窄が顕在化したものと思われた. カテーテルによる引き抜き圧検査を施行したが, 検査施行時は心房細動で, 100mmHg以上示した流出路圧較差は, シベンゾリン投与により洞調律に戻らなかったが圧較差の消失を認めた. 洞不全症候群の合併もあったためにペースメーカ植込みを行った上で, シベンゾリン内服を導入した. 左室肥大が軽度であっても, 流出路狭窄をきたした原因として, S字状中隔と, 僧帽弁輪石灰化が高度で僧帽弁前尖が前方に偏位していることが原因と考えられた. また, 流出路狭窄が心房細動により増悪したが, シベンゾリン投与は洞調律化と関係なく有効であった. 文献的考察を加えて報告する.

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© 2016 公益財団法人 日本心臓財団
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