心臓
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臨床研究
冠疾患患者における慢性閉塞性肺疾患併存と急性冠症候群発症
小丸 達也加藤 浩高橋 務子佐治 賢哉三浦 元彦
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2017 年 49 巻 7 号 p. 665-671

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抄録

 冠動脈に狭窄病変を有する患者では慢性閉塞性肺疾患(COPD)の併存が古典的冠危険因子と独立して急性冠症候群の発症のリスクとなるか検討した.冠動脈造影にて有意狭窄病変を認めた連続353例(年齢:71.2±9.9歳,男性/女性:259例/94例)を研究対象とし,COPDの診断の有無,急性冠症候群の既往の有無,古典的冠危険因子(高血圧,脂質異常症,糖尿病,喫煙)を調査,検討した.全対象者のうち34名(9.6%)が臨床的にCOPDと診断されていた.単変量解析では,COPD併存の有無は,急性冠症候群発症既往の有無と有意に相関していた(13.7% vs 6.5%,p<0.05).ロジスティック回帰分析による多変量解析では,COPDの併存は,年齢,性,古典的冠危険因子を補正しても,急性冠症候群発症の既往と有意に相関していた(オッズ比:2.33,95%CI:1.07-5.08,p<0.05).COPD併存患者は男性に多く(p<0.01),より高齢で(p<0.05),喫煙者が多く(p<0.0001),BMIが小さく(p<0.01),脂質異常症が少なかった(p<0.005).また,スタチンやACE阻害薬,β遮断薬などの心保護薬の処方がより少なかった(p<0.03).以上より,冠狭窄を有する患者においては,COPD併存は年齢,性,古典的冠危険因子から独立して急性冠症候群の発症リスクを高める.冠疾患患者の診療にあたっては,COPDの合併の有無に十分に注意を払う必要がある.

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© 2017 公益財団法人 日本心臓財団
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