心臓
Online ISSN : 2186-3016
Print ISSN : 0586-4488
ISSN-L : 0586-4488
第29回 心臓性急死研究会
左冠動脈主幹部に起始異常を認め,その物理的圧迫による心筋虚血にて数年間にわたり失神を繰り返した若年者の1症例
網岡 尚史渡邊 敦之大塚 寛昭赤木 達麻植 浩樹中川 晃志中村 一文森田 宏小谷 恭弘新井 禎彦笠原 真悟佐野 俊二伊藤 浩
著者情報
ジャーナル フリー

2017 年 49 巻 SUPPL.1 号 p. S1_110

詳細
抄録

症例は17歳男性.4年前より運動時に胸痛,失神を認め,症状は増悪傾向であった.他院にて電気生理学的検査まで含めた諸検査を施行するも原因不明であり当院に紹介,入院精査となった.入院時に施行したトレッドミル負荷試験にて心電図上,aVRにST上昇が出現,補充調律に移行,また著明な血圧低下,胸部絞扼感,前失神症状を呈した.冠動脈の器質的異常を疑い冠動脈CTおよびCAGを施行したところ左冠動脈は右冠尖起始であり,主幹部は大動脈と肺動脈に挟まれ圧迫,変形していた.失神の原因は左冠動脈圧排による虚血と診断し心臓血管外科に紹介,手術加療の方針となった.

冠動脈起始異常は臨床上,しばしば認められる先天的異常であるが,若年者の突然死の原因ともなり得る.若年者における繰り返す失神の一因として冠動脈起始異常は考慮すべきと考えられ,啓蒙的に報告する.

著者関連情報
© 2017 公益財団法人 日本心臓財団
前の記事 次の記事
feedback
Top