心臓
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[症例]
ダヴィンチロボットシステムによるMICS-CABGの1例
只腰 雅夫大橋 壯樹景山 聡一郎児島 昭徳大城 規和小谷 典子河住 亮山口 拓海
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2019 年 51 巻 2 号 p. 182-186

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抄録

 症例は脂質異常症を有する64歳の女性で,胸痛を主訴とし冠動脈造影検査にて左前下行枝起始部での有意な狭窄を認め手術目的にて紹介となった.分離肺換気にて全身麻酔を行い,左前腋窩線上第2,4,6肋間にポートを挿入し中央に3Dカメラ,右側に電気メスのスパツラ,左側に把持鉗子のアームをda Vinci Surgical System(Intutive Surgical社,米国)(以下:ダヴィンチ)と合体させた.コンソールにて左内胸動脈剥離を起始部から第6肋間の部位まで完全内視鏡下で剥離し切断した.その後,心膜を切除し,左前下行枝が吻合可能であることを確認した.その後第6肋間のポートの穴より切開を6 cm延長させ,左前下行枝をスタビライザーにて静止させオフポンプにて内胸動脈と吻合した.術翌日抜管し,無輸血にて経過した.冠動脈造影CTでのグラフト開存を確認し,その後合併症なく術後2週間目に退院となった.ダヴィンチによって完全内視鏡下での左内胸動脈剥離を3D画像による良好な視野で,きめ細やかな動きと手振れ防止機能にて安全に出血なく採取することが可能であった.心臓の複雑な手術も小切開,低侵襲で行うことが可能で,さらなる技術や器具の改良により広く発展すると思われる.ダヴィンチによるMICS-CABGの1例を経験したので報告する.

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© 2019 公益財団法人 日本心臓財団
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