心臓
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[臨床研究]
肺塞栓症における担癌症例と非担癌症例に関する後ろ向き検討
小松 稔典大熊 ゆか里清水 邦彦阿部 直之臼井 達也宮下 裕介宮澤 泉戸塚 信之吉岡 二郎
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2021 年 53 巻 1 号 p. 47-53

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抄録

 背景:癌患者では静脈血栓塞栓症(VTE)の発症リスクが高く,生命予後に影響することはすでに知られている.癌関連血栓症(CAT)の中でも肺塞栓症(PTE)は直接的な死因ともなりうる.

 目的:CATのrisk scoreや治療法はすでに提唱されているが,わが国の実臨床における報告はいまだ少ないため有用性が十分に検討されているとは言い難い.

そこで我々はPTEを発症した担癌症例を後方視的に調査し,risk scoreの有用性や実情を調査した.また非担癌症例と比較し,担癌症例特有の問題を検証した.

 方法:対象は2016年1月から2017年1月の間に当院においてPTEと診断され治療を行った48例(担癌症例21例,非担癌症例27例)について,患者背景,治療や転帰を後方視的に調査した.

 結果:担癌症例群でPESI scoreおよびKhorana scoreは有意に高く,死亡率も高かったが,PTEによる死亡は両群ともに認めなかった.治療はDOACの使用が両群ともに多く,担癌症例群ではDOACの投与量は有意に少なかった.出血イベントに差はなかった.

 結論:担癌症例群は非担癌症例群と比較して有意にrisk scoreが高く,死亡率も高かったがPTEによる死亡は認めず,抗凝固療法による出血イベントに差はなかった.担癌症例群ではDOACの少量投与が多く,有効かつ安全である可能性が示唆された.

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