2021 年 53 巻 10 号 p. 1110-1115
症例は59歳女性.Stanford A型急性大動脈解離で救急搬送された.本症例は統合失調症に高度肥満(BMI 37.3 kg/m2)を有し,呼吸平静なるも高炭酸ガス血症および著明な肺動脈拡張を認め,肥満低換気症候群(obesity hypoventilation syndrome;OHS)の状態と考えられた.高度の左心機能低下とCPK高値から急性心筋梗塞併発も疑われた.さらに腎機能低下も有していた.上行大動脈の偽腔は血栓閉塞しており,上行大動脈径は49 mmで,循環動態が安定しており胸背部痛も軽減していたことから,緊急手術は行わず内科的治療の方針とした.入院後重篤な呼吸不全に陥り,長期の挿管・人工呼吸器管理となった.OHSに伴う右心不全と広範囲心筋梗塞後の左心不全に対する薬物治療も必要であった.一貫して厳重な降圧管理と集学的治療を継続した結果,上行大動脈径は縮小し,解離偽腔は吸収された.血液透析治療導入となったが,独歩退院できた.多くの合併症を有する上行大動脈の偽腔閉塞型解離に対し,厳重な降圧治療を行うことで,外科手術を回避し良好な結果を得たので報告する.