心臓
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[症例]
上室性頻拍の出現とペースメーカーの設定が,倒錯型心室頻拍の発生に関係したと思われるたこつぼ心筋症の1例
賀来 文治福井 琢也新庄 祐介井ノ口 安紀北川 直孝勝田 省嗣一瀬 太郎
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2021 年 53 巻 11 号 p. 1239-1248

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抄録

 症例は67歳女性.64歳時に完全房室ブロックと心室細動を認め,除細動器の植込みがなされていた.その後も完全房室ブロックが持続していたために,DDDモードで心室ペーシングが行われていた.入院数日前に知人と怒鳴りあいの喧嘩をした.入院2日前からOptiVol Fluid Indexの上昇を認めていた(除細動器の履歴より).入院当日,入浴施設で入浴中にふらつきと眼前暗黒感が繰り返し出現したため当院へ救急搬送された.搬送時の心電図では胸部誘導における新たな陰性T波の出現と,QT時間の延長を認めた.緊急冠動脈造影検査では,冠動脈に狭窄所見を認めず,冠攣縮誘発試験も陰性であった.左室造影では,左室中部から心尖部にかけて無収縮を認め,病歴と臨床所見を総合して,たこつぼ心筋症と診断した.また除細動器の履歴からは,眼前暗黒感やふらつきの症状に一致して上室性頻拍とTorsade de Pointes(TdP)と考えられる心室頻拍が記録されていた.DDDモードの上限レートは植込み時より130拍/分に設定されていたが,たこつぼ心筋症に伴いQT時間が延長している状況で上室性頻拍が出現した際に,心室ペーシングが130拍/分の上限レートで追従したことによりT波の頂点付近で心室ペーシングが入ってしまったことに加え,心房興奮に対する心室応答がペースメーカーの設定の関係上,不規則に入る形となったことによりR-R間隔の揺らぎが生じ,short-long-short segmentが繰り返し出現したことが,TdPが頻発した原因になっていたものと考えられた.対応策として,ペースメーカーの上限レートの設定を130 bpmから100 bpmに変更し,さらに上室性頻拍の抑制のためにアプリンジン40 mg/dayで開始した.その後,上室性頻拍およびTdPは出現しなくなり,眼前暗黒感等の臨床症状も消失した.ペースメーカー植込み患者にたこつぼ心筋症が発症した場合,既存のペースメーカーの設定が致死的な不整脈の原因になりうる場合があり,臨床上注意を払う必要があると考えられた.

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