2021 年 53 巻 5 号 p. 469-474
患者は43歳の男性.生来健康であったが,来院1週間ほど前に転倒し,その後より歩行困難となったため,他院の救急外来を受診した.救急外来からの帰宅途中に心肺停止状態となり,電気的除細動が行われて自己心拍が再開した後に当院へ紹介された.当院到着時より全身性痙攣がみられたため,人工呼吸器管理を要した.緊急冠動脈造影検査では有意な冠動脈病変を認めなかった.血液検査では血清K値2.4 mEq/Lと低値であり,経静脈的に補充するも,さらに低下傾向であった.第2病日に難治性心室細動を生じたため体外式膜型人工肺(ECMO)を導入した.ECMO導入後も心室細動は繰り返し生じたが,第3病日に血清K値を正常範囲内に補正して以降,心室細動は再発しなかった.経胸壁心臓超音波検査では,一時的な壁運動低下がみられたが経時的に改善し,第6病日にECMOを離脱,第7病日には人工呼吸器を離脱した.その後は血清K値の低下も認めず,第36病日に後遺障害なく退院となった.著明な低K血症にもかかわらず尿中K排泄の亢進を認める一方,血漿レニン活性,血漿アルドステロン濃度は低値であったため,偽性アルドステロン症を疑った.病歴を聴取できるようになった後に,甘草のサプリメントを服用していたことが判明し,薬剤性偽性アルドステロン症と診断した.低K血症に伴う難治性心室細動では,稀に偽性アルドステロン症が背景にあり,注意を要する.