2021 年 53 巻 5 号 p. 491-496
症例は49歳女性.潰瘍性大腸炎に対して内科的入院加療中に,突然の意識消失を認め,心肺停止となった.蘇生中難治性心室細動を認め,経皮的心肺補助装置を装着.冠動脈造影上,左冠動脈入口部の血栓塞栓を認め,急性心筋梗塞の診断で同日緊急経皮的冠動脈形成術を施行した.治療後心機能問題なく,2日後に経皮的心肺補助装置抜去可能であったが,経食道心臓超音波検査上,上行大動脈から左冠動脈主幹部に連続する帯状の血栓を認め当科へ紹介となった.可動性があったため同日緊急手術の方針とした.手術所見では上行大動脈後壁に10×15 mm程度の左冠動脈入口部へ伸びる帯状血栓を認めた.その他,valsalva洞,冠動脈起始部,大動脈弁尖に血栓は認めず,大動脈壁の解離やアテロームも認めなかった.血栓の病理診断は血小板を主とする血栓であった.原因不明の血栓塞栓症の場合は,心室,心房内血栓の他に上行大動脈内血栓症の存在も念頭に入れておく必要がある.診断の際には経食道心臓超音波検査が有用であった.アテローム等動脈硬化性病変を伴わない大動脈内血栓症においては血栓性素因の検索が重要であると考えられた.