2021 年 53 巻 9 号 p. 973-980
症例は高血圧に対して通院加療中の65歳男性.5日前より咽頭痛と微熱,2日前より労作時呼吸困難と動悸を自覚するようになり,入院当日の朝に体動困難となったため救急搬送された.高度の頻脈と全身冷感を認め,胸部X線検査では両側butterfly shadow,経胸壁心エコー図検査では左室駆出率は10-15%程度の高度左室機能低下を呈していた.心原性ショックと判断し,緊急冠動脈造影検査を施行したところ冠動脈に有意狭窄はみられず,劇症型心筋炎と考えて心筋生検を施行し循環維持のために補助循環用ポンプカテーテルImpella 2.5を留置しCCUで管理を開始した.救急外来で肺塞栓症および大動脈解離の否定のため施行された造影CT検査では左副腎に56×63 mm径の不均一な造影効果を有する腫瘤が指摘されており,CCU入室後には血圧の著明な乱高下(収縮期血圧60 mmHg-260 mmHg)を呈したため褐色細胞腫に伴うcatecholamine-induced cardiomyopathyを強く疑ってα遮断薬の持続静注を含めた循環管理を開始したが循環制御は困難であった.救命のため補助循環留置下での外科的摘出術を検討されたが入院9日目に広範囲の出血性脳梗塞および後腹膜出血をきたし,手術治療までたどり着けず入院12日目に永眠された.劇症型心筋炎の臨床経過を呈し,補助循環装置を使用しても救命に至らなかった褐色細胞腫に伴うcatecholamine-induced cardiomyopathyの1例として文献的考察を交えて報告する.