2022 年 54 巻 1 号 p. 60-69
背景:心不全患者の塩分過剰摂取は心不全再入院の大きな要因である.心不全患者に対する塩分制限は心事故を抑制できると報告されているが,外来心臓リハビリテーション介入前後の塩分摂取量の変化が心事故に与える影響は明らかではない.
方法:対象は心不全で入院して心臓リハビリテーションを導入した症例のうち,退院後に外来初回と外来150日後の外来プログラム終了時に随時尿から塩分摂取量を評価した連続117例(年齢70歳,男性66%).外来初回の塩分摂取量が6 g未満であった塩分低値群と6 g以上の塩分高値群に二分した.また外来初回の塩分摂取量が6 g未満の症例を除く94例を外来プログラム終了時に評価した塩分摂取量が6 g未満に低下した改善群と6 g以上のままであった非改善群に二分した.両群間で患者背景と心事故(心不全増悪による再入院または心臓死)の有無を検討した.
結果:外来初回の塩分摂取量は8.6 g±2.7 gであり,外来初回の塩分摂取量が6 g未満であったのは117例中23例(19.6%)であった.塩分低値群,塩分高値群で患者背景に有意差は認めなかった.平均追跡期間27.1±17.0カ月の間に46例に心事故が生じた.心事故群は非心事故群と比較して塩分摂取量は有意に改善していた(9.7±2.3 gから9.9±3.2 g vs 9.2±2.0 gから7.6±2.3 g,p<0.01).外来初回の塩分摂取量6 g未満は心事故発生と関連していた(ハザード比0.34,95%信頼区間0.12-0.96,p=0.04).外来プログラム終了時の塩分摂取量が6 g未満に改善したのは94例中21例(22.3%)であり,外来心臓リハビリテーション介入前後における塩分摂取量の改善は心事故発生と関連していた(ハザード比0.28,95%信頼区間 0.11-0.70,p=0.006).
結語:塩分摂取量評価を含む包括的な心臓リハビリテーションは心不全患者の心事故回避に有用な可能性がある.