2024 年 56 巻 1 号 p. 67-76
症例は61歳男性,入院の約1週間前からの感冒様症状と呼吸困難で他院を受診.心機能低下と心筋トロポニンI上昇から心筋炎を疑われ当院へ転院搬送となった.救急到着時,血圧88/63 mmHg,脈拍104回/分,安静時12誘導心電図は広範なST上昇を伴う促進性接合部調律を示した.経胸壁心臓超音波検査では顕著な心筋浮腫を伴う全周性の壁運動低下(LVEF 10%)を認めた.低拍出症候群による多臓器不全を呈しており緊急でIMPELLA CPを挿入した.正常冠動脈であったことから劇症型心筋炎と臨床診断した.右心カテーテル検査の結果,肺動脈拍動指数(Pulmonary Artery Pulsatility index;PAPi) 0.5と右心不全の合併を認めたため,体外式膜型人工肺(Veno-Atrial ExtraCorporeal Membrane Oxygenation;V-A ECMO)を追加挿入した.第4病日より心収縮の改善を認め,第5病日にはV-A ECMOを離脱.第7病日にはIMPELLA CPを抜去した.心筋生検結果から劇症型心筋炎の診断が確定した.以降の経過は良好であり,第32病日に独歩で自宅退院となった.PAPiを含む血行動態指標を考慮し,適切にIMPELLA CPとV-A ECMOを併用することで救命しえた劇症型心筋炎の1例を報告する.