心臓
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[症例]
経カテーテル大動脈弁留置術(TAVI)時のバルーン大動脈弁形成術(BAV)後に生じた重症大動脈弁閉鎖不全症による心原性ショックの1 例
中西 准川村 豪嗣林 健太郎津久井 良昌多田 雅博八戸 大輔堀田 怜藤田 勉
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キーワード: 重症大動脈弁狭窄症, TAVI, BAV, LAS
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2024 年 56 巻 4 号 p. 385-390

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抄録

 重症大動脈弁狭窄症(AS)の治療法として,経カテーテル大動脈弁留置術(TAVI)が広く普及している.TAVIは外科的大動脈弁置換術(SAVR)と比較して低侵襲であり,超高齢者にも施行可能であるが,重篤な合併症を起こす可能性がある.今回,我々は生体弁留置前のバルーン大動脈弁形成術(BAV)により生じた重症大動脈弁閉鎖不全症(AR)による心原性ショックを経験した.症例は80歳台女性.症候性の重症ASと診断され,局所麻酔下鎮静法によるTAVIの方針となった.生体弁留置前のBAV直後より,カテコラミン抵抗性のショック状態となった.経胸壁心エコー図検査(TTE)ではARは判然としなかったが,tetheringによる重症僧帽弁閉鎖不全症(MR)を認めた.V-A ECMOを確立するも,循環動態は改善を認めなかった.経食道心エコー図検査を施行すると大動脈弁弁尖の逸脱を認め,massive ARによる心原性ショック,tethering MRと診断できた.その後,自己拡張型生体弁を留置し,血行動態は安定した.BAV後の急性重症ARはTTEでの評価が困難な場合があることをハートチーム全員が把握しておく必要がある.また,迅速な生体弁の留置が血行動態改善への鍵である.合併症の発生時,麻酔科医は全身麻酔への移行とTEEでの評価を常に考慮する必要性がある.

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