心臓
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[症例]
十二指腸内視鏡検査にて診断に至った,大動脈十二指腸瘻と腹部大動脈人工血管感染を合併した1例
高村 洸輝宮本 雄也野口 達哉宮川 和也久保 亨山崎 直仁江戸 直樹三石 淳之北川 博之花﨑 和弘三浦 友二郎北岡 裕章
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2024 年 56 巻 8 号 p. 822-828

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抄録

 腹部大動脈瘤に対して人工血管置換術後,被覆した残存瘤壁内の人工血管周囲漿液腫増大および吻合部仮性動脈瘤疑いで2度の手術歴がある88歳男性.X年9月,瘤壁内漿液腫増大による人工血管右脚の圧排で右下肢跛行が出現し,右脚内にステントグラフトを留置し症状は改善した.しかし翌月から38℃台の発熱を認め,単純CTで腹部残存瘤壁内人工血管周囲にガス像を認めたため,人工血管感染を疑い入院加療を開始した.当初心臓血管外科から大動脈消化管瘻の可能性ありとのことで上部消化管内視鏡検査(GIF)の勧めもあったが,腹痛などの消化器症状に乏しくPET-CTでも消化管に集積を認めなかったため,感染を疑う大動脈瘤患者へのGIFリスクを考慮し,まず抗菌薬治療で経過をみた.しかしその後も瘤内ガス像が遷延するため,GIFを施行したところ,十二指腸に瘻孔を認め大動脈十二指腸瘻の診断に至った.外科的根治術が必要と判断し十二指腸部分切除およびリファンピシン浸漬グラフトによる再人工血管置換術と大網充填が施行された.術後6週間の抗生剤投与を行い,45日目に自宅退院となった.大動脈消化管瘻は,腹痛,腹部拍動性腫瘤,消化管出血が古典的3徴として挙げられ,十二指腸に瘻孔をきたす頻度が高い.本症例は瘤壁内漿液腫との交通であったため腹部症状に乏しく,内科入院中に確定診断のためのGIFまで時間を要した.人工血管周囲に生じた漿液腫と十二指腸の交通した稀な症例と考え報告する.

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