心臓
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症例 僧帽弁動脈瘤を伴った大動脈炎症候群の1剖検例
深瀬 真之若木 邦彦小泉 富美朝蒲沢 壮夫田村 康二
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1978 年 10 巻 12 号 p. 1263-1271

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抄録

症例は49歳の男性で,既往歴では結核のため23年前に右腎摘出,7年前に胸椎カリエスの手術を受けている.現症では21年前に高血圧,5年前に大動脈弁閉鎖不全症(AI),7ヵ月前には僧帽弁閉鎖不全症が指摘され漸次,心不全が増強し死亡した.
剖検の結果,大動脈は全長にわたり高度の壁の肥厚と拡張があり,那須分類でIV型,組織学的には線維症型と判断される大動脈炎症候群であった.心臓は8509で牛心を呈し,大動脈弁は大動脈外膜からの線維増生により各半月弁が線維性に肥厚,短縮しAIの状態を呈していた.一方,僧帽弁前尖には1.5×1.3× 0.8cm大の左房に突出した僧帽弁動脈瘤を認め,その表面は平滑で血松や穿孔はない.僧帽弁動脈瘤について組織学的ならびに文献的に考察した結果,本例では大動脈炎の経過中に左房心内膜や僧帽弁に炎症が起こり,そこに左室圧が加わって動脈瘤を形成したものと推測した.

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