抄録
本態性高血圧において,血圧の進展に伴う圧負荷による心肥大および心機能の変化を,心エコー図法を用い,年齢,血圧,心電図所見,臓器障害を含む高血圧重症度別に心工3一図所見を検討した.若年性高血圧では心室中隔と左室後壁が肥厚し,高年群では左房径拡大,僧帽弁前尖A/E比増加がみられた.血圧の上昇に伴い,左房径の拡大,僧帽弁前尖後退速度の減少,A/E比の増加が認められた.心電図上,正常またはQRS高電位のみを示す段階では,心筋の軽度の肥厚のみが認められ,著明なSTT変化を伴ってくると,左室拡張終期径の増加がみられた.臓器所見を含めた高血圧重症度よりみると軽症群では心筋の肥厚のみみられ,中等症群では左房径の拡大,僧帽弁前尖A/E比の増加,僧帽弁前尖後退度の低下傾向を示し,重症群ではこれらが一層著明にみられた.