抄録
症例は32歳の男性.1967年3月より血液透析を開始した.約10年におよぶ長期生存慢性腎不全例である.1973年12月より.第1度房室ブロックが出現し,その後PQ間隔は変動しながら,徐々に延長を示しているため,His束心電図・右心カテーテル検査・UCG・心機図検査などにより,心機能評価を試み,房室ブロックの原因について考察を加えた.Hls束心電図では,AHブロックを呈し,UCG・心機図による諸計測値は正常範囲であったが,右心カテーテル検査では,肺動脈襖入圧および右室拡張終期圧の軽度上昇が認められた.慢性腎不全に代謝異常の存在することは,よく知られているが,本症例においてもCa代謝異常を示唆する,(1)血清Ca値の正常化,(2)AI-P値の上昇,(3)metacarpal indexの低下などの所見が認められ,刺激伝導系および固有心筋のCa沈着・線維化が,房室ブロックおよび心機能障害の原因と推測された.