抄録
心室中隔穿孔を合併した急性心筋梗塞5例において臨床所見,特に心電図と壷行動態とを比較検討した結果,完全右脚ブロックと左軸偏位を呈した群は1回心仕事係数が20g・M/beat/m2以下を呈し,予後は不良であった.
左→右短絡量は生存群では治療により減少したが,死亡群では治療にもかかわらず増加する傾向を示した.急性期の治療として静注用Nitroglycerin(TNG)またはDopamineとの併用による血管拡張剤療法を施行し,その有用性を検討した.両治療法により左室充満圧,肺血管・末梢血管抵抗は著明に低下,心係数と1回心仕事係数は増加し,静注用TNGは左→右短絡量を減少し得た.
以上の成績より,本症は両室のポンプ失調,肺高血圧症などを呈し,予後不良であるが,血管拡張剤療法は前,後負荷の軽減,左→右短絡量の減少とともに心機能の改善などをもたらし,有用であった.