抄録
雑種成犬9頭にて実験的左脚前技ブロック,右脚本幹ブロックを作成し,心表面マッピング,スカラー心電図,ベクトル心電図(McFee法)を用いて検討した.実験は2群に分け,I群(4頭)は左脚前技ブロック,次いで右脚本幹ブロックを作成し,II群(5頭)は逆の順序でブロックを作成した.
左脚前枝ブロックではQRS軸の変化はなく,右脚本幹ブロックではQRS軸は上方に偏位した.イヌでは左脚前枝の支配領域である左室前基部心表面は最終興奮領域であり,左脚前枝ブロックにより興奮伝播遅延が起こっても興奮伝播の方向は変わらないためにQRS軸は変化しない.また,右脚ブロックにて左室心尖部の最早期興奮部位から右室へ興奮伝播するために興奮の方向が逆になり,QRS軸が大きく偏位したと考えられた.
QRS軸の偏位には心臓全体の興奮伝播の方向性が重要である.