抄録
われわれはWenckebach型房室ブロックから高度房室ブロックへと移行し,繰り返す失神発作と頻回のめまい発作をきたした60歳の男性例を経験した.めまいに一致して,ホルター心電図で4:1ないし5:1の高度房室ブロックがWenckebach型房室ブロックにひきつづき生じていることを確認した.電気生理学的には,高位右房刺激に対して,90回/分の頻度でWenckebach型A-Hブロックをきたし,頻度を増すと2:1A-Hブロックから,2:1と3:1のalternating Wenckebach型ブロックを呈した. この他本症では, きわめて幅の広いH波を認め,ヒス束内ブロックの所見と考えられた.高度房室ブロックに対してペースメーカー植え込みが行われ,自覚症状は消失した.