心臓
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症例 僧帽弁逸脱で発見され,感染性心内膜炎に罹患後, Bentall法と僧帽弁置換術を同時に施行し,順調に経過し得たMarfan症候群の1例
能美 伸子山口 いづみ堀江 俊伸窪倉 武雄渋谷 実伊藤 直人広沢 弘七郎橋本 明政
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1986 年 18 巻 10 号 p. 1218-1224

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抄録

Marfan症候群にみられる心血管病変はすでに胎生期より始まっていると言われている.しかしその自然経過についての報告は少ない.今回われわれは心血管病変の経時的変化を19年間にわたり観察した1例が,感染性心内膜炎に罹患後,Bentall法と僧帽弁置換術を同時に施行し,順調に経過しているので報告する.
症例は19歳男子で,1歳時に心雑音を指摘された.3歳時,特徴的な体型よりMarfan症候群と診断され,6歳時,僧帽弁逸脱とannulo aorticectasiaを認めた.17歳時,感染性心内膜炎に罹患後,心血管造影を施行した.その結果,annulo aorticectasiaは76mmと拡大し,大動脈弁逆流III度,僧帽弁逆流II度を認めた.また左室拡張終期容積の著明な拡大と軽度の左心機能の低下を認めたために,手術適応と判断した.僧帽弁置換術とBentall法を同時に施行したが,19歳の現在順調である.
Marfan症候群の自然予後は悪く,特に感染性心内膜炎に罹患すると,僧帽弁腱索断裂などから急性左心不全を併発し,死の転帰をとることが多い.しかし綿密な経過観察により異常を早期に発見し,内科的治療を施行すると共に,適切な時期に外科治療に踏み切ることが予後の改善につながるものと思われた.

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