1986 年 18 巻 8 号 p. 914-920
小児開心術に際し,ミラーのカテーテルによる左室内圧測定,術中Mモードエコーによる左室容積測定により,術直前・直後の左室圧-容積曲線を描き各種先天性心疾患の血行動態およびその術直後の変化について検討を加えた.対象とした疾患は,心室中隔欠損症(VSD),Fallot四徴症(TOF),僧帽弁閉鎖不全症(MR),心臓型の総肺静脈還流異常症(TAPVR)である.術直後の主な変化としてVSDでは容積負荷の減少,等容収縮期の出現,左室仕事量の減少,TOFでは容量負荷の増大,等容収縮期・拡張期の出現,左室仕事量の増大,MRでは等容収縮期の出現,駆出率の低下,圧負荷の増大,左室仕事量の減少,TAPVRでは容量負荷の著明な増加を認めた.本法による圧-容積曲線は忠実に血行動態変化を反映し,無侵襲,簡便かつ何心拍かくりかえし計測可能できわめて有用な方法である.