心臓
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症例 冠動脈入口部単独狭窄の1中年女性例
井上 晃男佐藤 勉諸岡 成徳林 輝美高柳 寛酒井 良彦山中 俊彦山口 浩一藤邑 宏克清水 稔栫 英夫高畠 豊
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1988 年 20 巻 11 号 p. 1336-1340

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抄録

症例は43歳女性,昭和60年4月階段や坂道歩行時,布団のあげおろしに際し2~3分間続く前胸部痛が出現.同年5月近医にて狭心症と診断され投薬を受けたが胸痛は続き,昭和61年6月12日精査のため当科へ入院した.
安静時心電図は正常.Treadmill負荷心電図ではBruce変法stage3で胸痛が出現し,V2~V6でSTが下降した.運動負荷心筋シンチグラムでは負荷直後前壁から心尖部に欠損像を認め,2時間後同部への再分布を認めた.冠動脈造影では左冠動脈入口部に90%の狭窄を認めた.しかし冠動脈の他部位には全く異常がなかった.9月22日左前下行枝へのバイパス手術を施行,その後自覚症状なく経過している.本症例のごとく全身疾患がない冠動脈入口部単独狭窄はまれで,報告例ではほとんどが閉経期前後の女性である.このため本症の成因は不明であるが,通常の動脈硬化症とは異なった独立した1つの疾患であるとする報告もあり興味深い症例と思われる.

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