1988 年 20 巻 11 号 p. 1347-1353
頻拍中に右房内にslow conduction(S.C)の存在を証明し得た心房内リエントリー性頻拍の1例を報告する.症例は75歳の男性で,頻拍は心房刺激により容易に誘発および停止が可能であった.頻拍中の最早期興奮部位は外側中位右房(MLRA)であり,房室ブロックが発生しても頻拍に影響を与えず,また室房伝導もないことから心房内リエントリー性頻拍と診断された.頻拍中,高位右房内側(HRAm),冠静脈洞(CS)およびMLRAからペーシングを行ったところ,MLRAからのペーシングによってのみS.Cを証明しえ,HRAm,CSからのペーシングではSCを証明し得なかった.またMLRAにおいて頻拍時とともに非発作時にもsplit potential(S.P)を認めた.かかる頻拍で頻拍中のS.Cを証明し得たのは我々の知る限り本例が初めてであると思われるので,頻拍と,S.PおよびS.Cを証明しうるペーシング部位との関係などについての若干の考察とともにその電気生理学的所見について報告する.