抄録
心筋の不十分,過度,病的な肥大を理解し,治療するには,心筋肥大の分子機序が確認されねぼならない.心筋細胞の生長を制御する細胞外信号および細胞内経路の確認には細胞培養モデル系が望ましい.細胞培養系の解用により,α1-アドレナリン受容体が,心筋細胞肥大,収縮活性の発生および,c-myc原腫瘍遺伝子ならびに収縮性タンパクの胚/新生児イソフォームを含む特異的遺伝子の表現を調節することが判明した.後受容体刺激後の信号経路は,phosphoinositide代謝系およびプロテインキナーゼCに関係するようである.細胞内信号は前翻訳事象,おそらくはRNA転写を修飾する.肥大細胞中に存在する特異タンパクは,肥大を起こす刺激によって異なり,一部の細胞は“病的に”肥大したようにみえる.α1-アドレナリン受容体の刺激による生長のすべての機転は明らかでないが,今後さらに研究する価値がある.