抄録
細胞膜表面に存在するホルモン受容体と細胞内セカンドメッセンジャーとの間には,GTP結合蛋白質(G蛋白質)と呼ばれる少なくとも3つのサブユットから成る蛋白質が存在する.近年,G蛋白質は各種細胞に普遍的に存在し,以下のように多種,多機能であることがわかってきた.すなわち,G蛋白質はアデニレートシクラーゼA2重調節(促進,抑制)し,電位依存性カルシウムチャンネルを抑制し,リン脂質の代謝回転に共役し,カリウムチャンネルを調節し,ホスフォリパーゼA2を活性化する.さらに,G蛋白質,アデニレートシクラーゼ触媒部位とプロテインキナーゼC,カルモデュリンが相互に連関していることもわかってきた.
心臓肥大の細胞レベルでの機構は不明な点が少なくないが,cAMP,G蛋白質が細胞増殖に密接に関わっていることが分かってきた.我々は,高血圧自然発症ラット,イソプロテノール投与ラット,加齢ラットの心筋を用いてG蛋白質の変化を検討したので,その成績の一部を報告し,さらに,細胞増殖におけるG蛋白質の役割について考察した.