抄録
症例は68歳男性.乾性咳,労作時呼吸困難を主訴に昭和62年3月10日入院.胸水,心嚢水の貯留を認め,また心膜腔内にフィブリンを思わせる層状エコーを認めたため,心膜癒着を予防する目的で留置したカテーテルよりウロキナーゼの心膜腔内投与を行うとともに連日排液を行った.心嚢水中adenosinedeaminaseactivity(以下ADA)値上昇,糖の減少等の所見より結核性心膜炎を疑い,抗結核療法を開始したところ,心嚢液は約1週間で消失し,ADA値も正常化した.入院後8週目に心膜生検,心嚢液の培養結果から結核性心膜炎と確診した.心不全症状はさらに増悪し,右室圧曲線も拡張障害のパターンを呈したが,抗結核療法の継続により5月下旬より著明に改善し,現在経過観察中である.本症例では,結核性心膜炎の早期診断,治療効果の判定に対する心嚢水中ADA活性値測定の有用性,および急性期から亜急性期の心膜問の癒着を防止する目的での心膜腔内ウロキナーゼ投与の有用性が示唆された.