1990 年 22 巻 1 号 p. 55-60
内科的治療に抵抗する活動性感染性心内膜炎に対して外科治療が施行されるが,近年,手術成績が向上している.しかし,実際上,手術時期の判断には困難な事がある.
我々は最近の4年間に,5例の自己弁の活動1生感染性心内膜炎に対して外科治療を行い,1カ月後に多臓器不全でAVR+MVRの1例を失ったが,AVRの4例を救命した.術前に心不全が十分にコントロールしえた2例は,多発性の塞栓症と菌血症の再発のために,AVRを受けた.内科治療に抵抗する進行性の心不全があった3例のうち,1例が死亡した.死亡例は心不全発症から手術までの期間が長く,既に術前に腎不全,塞栓症がみられた.切除弁を検討すると,術前に心不全がコントロールされた例で高度の弁尖の肥厚がみられたのに対し,進行1生心不全の症例では,弁尖の穿孔断裂,腱索断裂等の弁組織の破壊的変化が特徴的であった.
活動性感染性心内膜炎では進行性の心不全がある場合,全身状態が悪化する前に早期に外科治療に踏み切るべきであると思われた.弁組織の破壊的変化は,進行性の心不全を招きやすいと考えられた.