心臓
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臨床 病理組織学的に多数の著明なリンパ球集簇を認め“慢性活動性心筋炎(chronic activemyocarditis)”と考えられた3剖検例
岡部 眞典福田 圭介川口 浩河野 知記中島 与志行広木 忠行荒川 規矩男菊地 昌弘
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1990 年 22 巻 10 号 p. 1140-1150

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抄録

従来の報告に類をみない,明らかなリンパ球集籏を伴う慢性心筋炎の3剖検例を経験した.3症例は全て50歳台の女性で,互いに類似した臨床像と病理形態を呈した.2例は心不全,1例は伝導障害で発症したが,いずれも主徴候は治療抵抗性の心不全であった.これら3例では発症から3~6年の経過を観察できたが,心不全が入院加療を要する程度にまで進行した後,約3年で全例が死亡した.
剖検心の重量は,それぞれ480・530・430gと増大.肉眼的には,心室壁の菲薄化を伴う左右両室の拡張を認めた.組織学的には,多数のリンパ球の集籏をみたことがきわめて特徴的で,一部では活動性炎症,すなわち心筋細胞の破壊像を認めた.心筋線維症は,左室中輪状筋層を中心に帯状ないしは不整斑状に認め,膠原線維は密で成熟しており慢性の経過を裏付けた.このような臨床経過と,特異的な病理組織所見より,我々はこれら3例に関して“慢性活動性心筋炎(chronic activemyocarditis)”という新しい概念を提唱した.

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