心臓
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研究 心臓移植後の血管性(液性)拒絶反応
病理学的所見と臨床所見との関連について
布田 伸一関口 守衛Elizabeth H. HammondRobert L. YowellRonald L. MenloveDale G. RenlundMichael R. BristowWilliam A. Gay JrKent W. JonesJohn B. O'Connell
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1990 年 22 巻 8 号 p. 892-902

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抄録

連続36例の心臓移植患者から得られた連続551例の心内膜心筋生検標本を病理組織学的検査と免疫組織学的検査で検討し,移植心の拒絶反応を細胞性拒絶反応,血管性(液性)拒絶反応,混合性拒絶反応の3型に分類した.細胞性拒絶反応の診断はBi1-1inghamの心臓移植後拒絶反応の診断基準を修正したユタ基準を基に,血管周囲性,心筋細胞間のリンパ球浸潤によって行った.血管性(液性)拒絶反応の診断は光顕での血管内皮細胞腫脹,血管炎の所見と,免疫組織学的検査での免疫グロブリンと補体の血管壁への沈着によって行った.混合型拒絶反応の診断は細胞性,血管性(液性)拒絶反応の所見が同時に存在するものとし,36移植心のうち20移植心が細胞性拒絶反応を,7移植心が.血管性(液性)拒絶反応を,9移植心が混合性担絶反応を示した.血管性(液性)拒絶反応を示した移植心は,細胞性拒絶反応を示した移植心に比し生存率は著明に低く(p
0.05),混合性拒絶反応の生存率は二者の中間を示した.また血管性(液性)拒絶反応を呈した7移植心中3移植心にpositive donor specific crossmatch, panel reactive antibody≧5%,左室収縮障害が認められた.移植後早期(移植後3週間まで)に血管性(液性)拒絶反応を診断する唯一信頼性の高いものは,免疫組織学的検査で血管壁への免疫グロブリンと補体の沈着,病理組織学的検査で血管内皮細胞腫脹と間質浮腫の存在であった.以上より心移植後,特に1カ月間は免疫組織学的検査も行い,予後の悪い血管性(液性)拒絶反応を早期に診断すべきであると考えられた.

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