心臓
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症例 肺高血圧症と血性心嚢液による心タンポナーデを初発症状としたSLEの1例
小竹 親夫高岡 秀幸鈴木 聡林 孝浩川口 慶三瀬尾 俊彦戸田 常紀小林 克也
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1991 年 23 巻 2 号 p. 177-181

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抄録

SLEが心タンポナーデを初発症状とすることは極めて少なく今までに4例が報告されているにすぎない.さらに肺高血圧症を初発症状とした例も我々が調べた範囲では今までに2例にすぎない.今回我々は肺高血圧症と心タンポナーデを初発症状としたSLEの1例を経験したので報告する.症例は18歳女性.昭和63年2月16日, 咳が出現したため近医を受診し速脈および著明な心拡大を指摘され本院入院となった。入院後, 心エコーにて多量の心嚢液貯留, 左房と右房の拡張期虚脱および右室腔の拡大を認めた.S℃ カテーテルにて肺動脈圧78/40mmHg, 右室圧78/10mmHg拡張末期圧15mmHgと著明な肺高血圧症および拡張充満期圧の上昇を認めた.一方臨床検査にて抗DNA抗体80倍, 抗核抗体2,560倍, 補体の低下, 持続する蛋白尿を認めた.以上より肺高血圧症と心タンポナーデを初発症状としたSLEと診断した.心膜切開術を施行し血性心嚢液2,000mJを除去した後ステロイド療法を施行したが肺動脈圧は40/20mmHgと肺高血圧症は残存し不可逆的な肺および肺血管病変が示唆された.肺高血圧症を合併したSLEは予後不良であり右心不全死や突然死をきたすといわれている.同様に心タンポナーデを認めた場合も心膜切開術やステロイドパルス療法などの十分な管理が必要であり, どちらもSLEの重篤な合併症であり注意が必要であるとされている.今回我々は両者の合併したSLEの1例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告した.

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