心臓
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臨床 ニトログリセリン静注の冠循環に及ぼす作用と耐性出現
石原 正治佐藤 光立石 博信内田 俊明土手 慶五
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1991 年 23 巻 3 号 p. 274-280

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抄録
ニトログリセリン静注の冠循環に対する作用と耐性の出現について検討した.対象は冠動脈造影を施行され前下行枝に有意狭窄のない29例.ニトログリセリン持続静注(1.0μg/kg/min)を2~4時間施行したA群(n=9),24~36時間施行したB群(n=10)と対照群(n=10)に分類し冠動脈造影を施行,ニトログリセリン1.Omgボラス静注の効果を観察した.冠動脈径と冠血流速度を前下行枝近位部で電子計測計と冠動脈ドップラーカテーテルを用いて測定した。肺動脈梗入圧は対照群(9±2mmHg)に比しA群では低下していた(7±3mmHg,p<0.05)がB群は対照群と差なく(10±3mmHg)耐性の出現が認められた.ボラス静注では対照群とA群で持続的な低下がみられたがB群では一過性に軽度低下したのち5分後には前値に戻っていた.冠動脈径は対照群(2.9±0.3mm)に比べA群,B群とも有意に拡張しており耐性は認められなかった(3.6±0.3mm,3.8±0.6mmいずれもp<0.01).ボラス静注後には3群間に差なく対照群にのみ有意な冠動脈径の増加が認められた.平均冠血流速度はボラス静注により対照群では有意に増加したが(63±22%,p<0.01)A群では有意な変化を認めなかった(-9±7%).一方B群では再び有意な増加を認め(28±11%,P<0.01)耐性の出現が示唆された.以上よりニトログリセリンの耐性は作用部位により異なり,耐性の出現下にはボラス静注の併用が有用であることが示唆された.
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