心臓
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症例 Kent束がカテコールアミンとベラパミルに感受性を有し,いわゆる過常伝導の関与が考えられる間欠的WPW症候群の1例
大島 満相沢 義房庭野 慎一江部 克也船崎 俊一佐藤 政仁柴田 昭
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1991 年 23 巻 3 号 p. 311-315

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抄録
安静時PQ短縮およびデルタ波をほとんど認めず,運動負荷時の心拍数の増加に伴いデルタ波が持続的に認められた11歳の間欠性WPW症候群の1例を経験した.過去に運動後の軽い動悸を自覚しているが,頻拍発作の明らかな既往はない.電気生理検査中,無投薬下ではデルタ波は出現せず,イソプロテレノール投与にて心拍数が増加すると(75/分から92/分)間欠的にデルタ波の出現を認めた.高位右房での早期刺激では一定のゾーンでデルタ波が出現し,高頻度刺激時にも間欠的にデルタ波の出現を認めたが,ベラバミル投与でデルタ波は完全に消失した.また房室回帰頻拍を含む頻拍は誘発されなかった.無投薬で運動負荷試験を行うと,心拍数140/分以上で持続的にPQ短縮およびデルタ波の出現を認めたが,ベラバミル10mg静注後は心拍数160/分以上でデルタ波が持続的に出現するようになった.運動負荷やイソプロテレノール投与下でデルタ波が出現し,ベラバミル投与後デルタ波の出現が抑制される事から,カテコールアミンとベラバミルに感受性を有する副伝導路を持つWPW症候群の1例と考えられ,その伝導にいわゆる過常伝導が関与すると思われた.
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