心臓
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症例 漸次増大する右肺動脈拡張と進行性の呼吸困難で発見され血栓内膜除去術により軽快した慢性肺血栓塞栓症の1例
坂本 直哉梅沢 滋男稲田 美保恵尾林 徹足立 博雅是永 正義金山 正明田中 信行向井 恵一
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1992 年 24 巻 6 号 p. 726-732

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抄録

症例:58歳,女性,主婦.入院6年前頃より胸部圧迫感が年に数回出現,2年前より右肺動脈拡を指摘されていた.1カ月前より労作性呼吸困難が出現,増強したため入院.胸部聴診上II音の分裂と肺動脈成分の亢進を認め,動脈血ガス分析はPO2,47.4Torr,PCO2 30.2 Torrと低下,心エコー上右室肥大を認め,肺動脈平均圧は41mmHgと上昇していた.肺血流シンチにて広範な欠損像を認め,肺動脈造影にて右肺動脈主幹部から下葉枝にかけ多発性の血栓付着を認めた.以上の所見より慢性肺血栓塞栓症と診断し,抗凝固療法を施行したが臨床症状の改善は一時的であったため,肺動脈血栓内膜除去術を施行し,肺動脈圧,PaO2ともに改善した.慢性肺血栓塞栓症は,特徴的な症状に乏しく診断困難とされ,いまだその報告例は少ない.また,その治療については抗凝固療法などの保存的治療は一般に有効性に乏しく,近年肺動脈血栓内膜除去術の成績の向上に伴い本症の予後の改善が報告されている.本例の臨床経過は慢性肺血栓塞栓症の診断,治療を行う上で示唆に富むものと考え報告する.

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