心臓
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研究会 第25回 河口湖心臓討論会 主題:再灌流障害とフリーラジカル T-butyl hydroperoxideによる膜脂質過酸化の家兎結節細胞に及ぼす電気生理学的効果
西村 昌雄佐藤 伸之渡部 良夫
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1992 年 24 巻 6 号 p. 751-766

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抄録

再灌流時不整脈の発生機序を調べるため,t-butyl hydroperoxide(TBH)を用いて,ウサギ洞結節および房室結節細胞の膜脂質を過酸化させ,活動電位ならびにイオン電流に及ぼす効果を検討した. T B Hは両結節細胞のCa2+電流コンダクタンスを初期に増加させた後,減少させ,その結果自動能を一過性に促進後,抑制することが明らかとなった.Ca2+電流の不活性化曲線はTBHにより脱分極側に偏位し,勾配因子も増加した.遅延整流性K+電流はCa2+電流と同様に2相性の変化を生じたが,過分極により活性化される内向き電流と背景電流は単相性に増加した.房室結節細胞ではTBHにより早期後脱分極と遅延脱分極が発現した.前者はCa2+電流の著明な増加が,後者は細胞内Ca2+過負荷が機序をなすと考えられた.以上,TBHによる膜脂質過酸化は結節細胞の生理的自動能の充進とその後の抑制,さらには異常自動能を惹起し,房室結節伝導を抑制する事が示唆された.

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