抄録
心筋梗塞1,634件を1986年から58ヵ月間観察し,Ca拮抗薬,硝酸塩,抗血小板薬,β遮断薬,ワーファリン,脱コレステロール薬につき,再梗塞予防効果を判定した.Ca拮抗薬,硝酸塩,抗血小板薬は無作為に服用,非服用群にわけprospectiveに効果を判定し,他の3薬についてはretrospectiveに調査した.服用,非服用群間の患者背景に大きな差はなかった.再梗塞は91件(5.6%)にみられた.各薬剤別にこれをみると,抗血小板薬服用群908件では38件(4.2%)に再梗塞がみられたが,非服用群715件では53件(7.4%)にみられ,服用群の再梗塞発生率は有意(p<0.01)に低値であった.Odds比は0.55,95%信頼限界は0.36と0.84であり,服用群の再梗塞が有意に低値であることを示した.他薬の再梗塞はワーファリン服用群412件中22件(5.3%),非服用群1,218件中69件(5.7%),β遮断薬948中51(5.4%)と682中40(5.9%),脱コレステロール薬425中24(5.7%)と1,205中67(5.6%),Ca拮抗薬1,043中66(6.3%)と587中25(4.3%),硝酸塩1,091中73(6.7%)と539中18(3.3%)であり,服用群の再梗塞発生率が有意に低いものは抗血小板薬以外なかった.本研究での抗血小板薬はアスピリンにチクロピジンかジピリダモールを併用したものであり, これらの薬剤による血栓形成の阻止が再梗塞防止に有効であると結論された.