抄録
Wolff-Parkinson-White症候群における突然死の機序として,心房細動の出現時に早い心室応答から心室細動へ移行する事が知られている.心室細動の発生の危険性は副伝導路の有効不応期(250msec以下)や,心房細動時の副伝導路を介する心室波の最短間隔(200msec以下)により評価されるが,前者は後者より長いとされている.しかし,我々は逆に,心房細動時の所見からは最短RR間隔は310msecと長いが,期外刺激法で決めた副伝導路の有効不応期は心房の機能的不応期が250msecであり従ってそれ以下であった例で,外来観察中に受診を中断し,3年6カ月後に突然死した症例を経験した.本例は,心房細動時の副伝導路を介する最短RR間隔より不応期の方が短く,本症の危険群の決定に際し留意すべき点を示していると考えられた.