心臓
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臨床 後天性弁膜症における冠動脈病変の合併
岡野 嘉明永田 正毅土師 一夫山岸 正和大森 文夫
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1993 年 25 巻 12 号 p. 1399-1406

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抄録

心臓カテーテル検査および冠動脈造影法を施行された後天性弁膜症連続1,354例を対象として,器質的な有意冠動脈病変を合併した症例の頻度と,各症例の臨床的特徴について検討した.後天性弁膜症における有意冠動脈病変の合併頻度は,5.2%であり,その約半数が1枝病変であった.高齢者,男性,単弁疾患とくに大動脈弁疾患に多く認められた.弁膜症の成因別では,大動脈炎症候群と動脈硬化性弁膜症において有意冠動脈病変の合併を多く認め,重症例の割合も高かった.
僧帽弁狭窄症以外のリウマチ性弁膜症では冠動脈病変の合併はまれであり,僧帽弁狭窄症においても,比較的軽症な冠動脈病変が多かった.50歳以下の若年例と,左主幹部病変または多枝病変を有する重症冠動脈病変合併例の大多数は,大動脈炎症候群か冠動脈危険因子を有する症例であった.
重症冠動脈病変合併例,狭心症を有する症例の大多数に弁冠同時手術を適応し,その成績および短期予後はほぼ満足すべきものであった.冠動脈病変合併の診断に際しては,年齢,性別,弁膜症の病型および成因,冠動脈危険因子の有無などの要因を考慮に入れることが重要と考えられた.

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