1993 年 25 巻 4 号 p. 425-429
26歳,女性.1988年9月,感冒症候群後に心不全を発症し,心電図でST上昇,血液検査で筋原性逸脱酵素の上昇,コクサッキーA16ウイルス抗体値1,024倍を呈した.11日後に心タンポナーデに対し心膜穿刺を施行し,700mlの血液を排除,一時小康を得たが,突然心肺停止に終わった.剖検所見では心重量430g,右室後面に破裂孔と,その周囲の凝血塊を認めた.組織学的に両心室筋に広範な単核細胞浸潤と心筋細胞壊死を伴う急性非特異性心筋炎所見と裂孔周囲に脂肪組織の進入を認め,ウイルス性心筋炎が心外膜下脂肪組織に波及して心破裂を生じたまれな例と診断された.