心臓
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第13回 心臓核医学研究会 アデノシン負荷thallium-201心筋SPECTによる冠動脈疾患の評価
阿部 真也竹石 恭知千葉 純哉殿岡 一郎友池 仁暢
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1993 年 25 巻 Supplement1 号 p. 45-52

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抄録
虚血性心疾患を疑い,アデノシン負荷Tl-201心筋SPECTを施行した連続55例を対象とした.また,うち22例では運動負荷Tl-200心筋SPECTも同時期に行い,アデノシン負荷と比較した.アデノシンは0.14mg/kg/minを6分間持続静注し,開始後3分の時点でTl-201を別の静脈ラインから投与した.アデノシン静注終了5分後と3時間後に心筋SPECT像を撮像した.得られた短軸および長軸断層像から灌流欠損,再分布の有無を視覚的に判定した.また,局所の相対的Tl-201摂取率を定量評価した.アデノシン投与により収縮期血圧は低下,心拍数は増加, rate-pressure productはわずかに増加した(9,314±2,377vs.10,360±2,148,p<0.001).胸痛13例,頭痛7例,ST低下17例,II度房室ブロック11例を認めたが,静注中止により速やかに消失した.アデノシンと運動負荷で,症例毎の灌流欠損および再分布の有無は,それぞれ91%(20/22),86%(19/22)の症例で一致した.セグメント毎では,灌流欠損の有無は90%(218/242),再分布の有無は89%(215/242)で一致した.アデノシンと運動負荷で,セグメント毎の局所Tl-201摂取率は相関係数r=0.85,Tl-201欠損の最低値はr=0.75,Tl-201欠損の広がり(extent score)はr=0.83といずれも良好な相関を示した.冠動脈造影を施行した39例において有意狭窄を75%以上とした場合の器質的冠動脈病変の診断率は敏感度100%,特異度88%,正診率97%であった.運動負荷も施行した22例ではアデノシンは敏感度100%,特異度83%,正診率95%,運動負荷は敏感度88%,特異度83%,正診率86%であった. 以上よりアデノシン負荷Tl-201心筋SPECTは虚血性心疾患患者に対して安全に施行でき,その診断に有用であると考えられた.
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