心臓
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研究会 第27回 河口湖心臓討論会 主題:病態における心筋イオンチャンネル 心筋細胞の容積調節に伴う膜電流変化
萩原 誠久松田 直樹坂井 理映子笠貫 宏細田 瑳一
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1994 年 26 巻 8 号 p. 886-894

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抄録

心筋細胞では様々な病的状態において,細胞形態の変化を示すことが知られている.特に,心筋虚血や心不全時には細胞浮腫をきたすことが報告されているが,これらの形態変化に伴う細胞膜の電気的変化,特にイオン電流の変化に関する報告は少ない.今回は,家兎心房筋および洞結節細胞にパッチ電極を用いてwhole-cell電圧固定法を行い,低浸透圧刺激に伴う細胞膨化により活性化されるKおよびCl電流を解析した.低浸透圧外液の灌流により細胞は腫大し,この変化に伴って電流量は増大し,二相性の電流変化を示した.初期の電流変化はK+イオン濃度に依存し,その逆転電位はK+の平衡電位に一致した.またBaやキニンによって抑制されることよりK電流であることが確認された.後期の電流変化に関してはCl-の平衡電位と一致し,Clチャネルブロッカーに感受性があることより低浸透圧刺激に伴うCl電流であると考えられた.初期のK電流については,その活性化に細胞内Ca2+濃度の上昇が関与していることが示唆されたため,低浸透圧刺激による細胞内Ca2+増大に伴い活性化されたK電流であると考えられた.これらKおよびCl電流が細胞の膨化時に活性化された結果,細胞内の水分が排出され,心筋細胞の容積調節が行われることが示唆された.

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